袋帯とは表も裏も模様があり広幅の織機で織った丸帯を簡略化したものです。柄のある表地と無地の裏地を合わせて仕立てた帯のことです。そうすることにより軽くしなやかになり締めやすくなります。
裏地を無地ではなく地紋のある生地にしたり、白地ではなく表地の柄の中の色をとって雰囲気の合う色目の裏地でもお洒落です。
帯幅は30㎝~31.5㎝くらいです。特に31㎝のものが多いです。全体の長さはそれぞれ若干違いますが、4m30㎝前後というところでしょうか。
柄付は、全通柄(全体に柄があるもの)や六通柄(垂先から手の途中、無地の箇所を挟んで手先に柄があるもの)、ポイント柄のものがあります。
ポイント柄とは、お太鼓柄と言って垂先から垂境までの垂丈は約180㎝で、その内垂先から太鼓柄の中心まで約133㎝です。胴にあたる部分は、垂境から手柄中心まで約45cm~53㎝で手丈は230㎝~260㎝です。この辺りの寸法は手先をどれだけ取るかによって若干ですが垂境が変わります。
帯の種類
◇袋帯=『丸帯』・『袋帯』
◇名古屋帯=『九寸名古屋帯』・『京袋帯』・『八寸名古屋帯』
◇半幅帯=『小袋半幅帯』・『単衣半幅帯』
以上に分けられます。
袋帯の歴史
帯の中では歴史が浅く、昭和初期頃に使われるようになったとされています。
始めは、江戸時代中期に女性用の帯の一つとしての「丸帯」が最も格の高い第一礼装用の帯として誕生しました。
広幅の織機(今の袋帯の2倍の幅/約70㎝の幅)で織った帯を折り畳んで両端を袋状に縫い合わせたものを丸帯といいます。織りのしっかりした生地に芯地を入れて仕立てますので重さは約3kg程にもなります。締めた姿は非常に重厚かつ艶やかなものですが、お締め頂く方は大変重く尚且つ締めにくいので、気軽に締めて頂くものとは言えません。構造上、締めてしまえば見えなくなる裏側にも柄が入っているため、江戸時代においても贅沢な品であったようです。
戦中戦後の物資の少なかった昭和初期の時代背景がありそれと同時に少しでも軽く締めやすさを追求してできたのが、現在の袋帯です。丸帯の半分の幅だけの生地に無地の別裏地をあてて仕立てることで、価格を抑えて庶民にも買えるものにしました。
よって丸帯は現代では婚礼衣装や、本職の芸妓さんなどが使うのみになっています。
袋帯を使う場面
黒留・色留の礼装や華やかに装える訪問着、お茶席向きの付け下げや色無地色や江戸小紋など。
これらは、結婚式、披露宴、お見合い、クラス会、お茶席、入卒の式典、歌舞伎、他家へのご挨拶から園遊会出席までの社交的な場面に必ずお締め頂けます。
袋帯の合わせ方
きものと帯をコーディネイトする時に色調(着物の色と帯の色)と格(着物と帯)が調和されているかを考えて選びます。そこから少しステップアップした選び方は、模様の調和にも気を配られると装いがより一層素敵なものになります。
きものの模様が、吉祥模様・名物裂模様・王朝風模様・正倉院模様・御所解模様などの時、吉祥模様以外は時代性が感じられる柄行です。着物の場合は、通常多くの模様を取り合わせて構成されています。時代の異なる柄が組み合わされたデザインには、違和感がありますので選ばれないというのもポイントです。フォーマル向きの帯として、合わせやすくて帯の柄ゆきの数が多いのはは、有職文様です。それは、日本の模様の基盤と言えるのが有職文様だからです。こちらの柄の帯はどのようなタイプのきものにも合わせやすく、品よくまとめる基本的な帯と言えます。
袋帯と名古屋帯の着用シーンの違い
結び方が違うため、使う場面も違ってきます。
袋帯は、二重太鼓でおめでたい場面に結びます。喜びが何回あっても良い場面=『喜びが重なるように』という意味で着用します。又着物の格によっても袋帯を選びます。
名古屋帯の一重太鼓は、小紋や紬、街着として着られている普段着に近いものに合わせたり、麻・綿麻紬・綿紬などにもお締め頂けます。
又、黒とも名古屋帯は一重太鼓で不幸があった場面で『重ならないように』の意味があります。
このことから現在では、
◎結婚式などのおめでたい場面には袋帯を使う。
◎葬儀などの不幸があった場面では名古屋帯を使う
これが一般的です。
以上は戦後のスタイルであり、それ以前に作られた喪服については丸帯や袋帯というのが一般的でした。
名古屋帯が喪の場面に締められるようになったのは、縁起もありますが、どちらかというと、袋帯よりも名古屋帯の方が葬儀の場面で着付けしやすい(二重太鼓よりも一重太鼓の方が簡単)という訳も根底にあります。
しかし地域によっては、今でも葬儀の場で袋帯を一重太鼓で使ったり、ましてや袋帯で二重太鼓にするというところもあるので、その時は地域の慣習と言うことで受け入れるようにして下さい。
袋帯と合わせるきもの
袋帯は、本来フォーマルな帯とされ、織の帯でお太鼓の部分を二重にする「二重太鼓」を作るのが一般的な使い方です。吉祥文様の鶴亀や正倉院名物裂に由来する文様は格調があり改まった装い向きです。
◇留袖や色留袖のような礼装の袋帯は、金糸・箔をふんだんに織り込んだものや吉祥文様で西陣織の帯が主流です。
◇振袖には、礼装用でも振袖に向いている柄や質や締めやすさの帯がございます。留袖の礼装用に比べて色も鮮やかで柄にも丸みがありかわいい印象になります。変わり結びをしますので柔らかくどのような形にもできる帯が好まれます。間違っても箔の帯を使用しないことをお薦めします。振袖の帯は色々な形を作るので箔の折れが戻りにくいか戻らない場合がございます。ご注意下さい。
◇訪問着・付け下げなどは、柄ゆきで帯を考えます。吉祥文様柄や豪華な柄付や箔をふんだんに使ったきものは、フォーマルな着物の装いですので格調高い袋帯を選びます。佐賀錦や唐織やつづれの帯などはぴったりです。すっきりとした柄付の軽めの訪問着や付け下げは、格式を問わない袋帯やしゃれ袋帯で合わされても良いです。
◇色無地や江戸小紋(紋付)には、準礼装用の帯やしゃれ袋帯などを合してください。
◇モダンな付け下げや無地感のとび柄小紋やしゃれた感じの江戸小紋や紬のきものには、しゃれ袋帯をお薦め致します。
帯芯は、帯の種類によって変えます。昔は厚い帯芯でしたが、今は薄くて良い芯があります。帯の生地自体がしっかりしている場合は薄い帯芯で仕立てます。染帯のような生地に張りがない場合は少し厚めの帯芯を入れて帯自体に張りを持たせます。
帯の柄
大きく分けて、植物文様・自然文様・架空の文様・風景文様・鳥/動物/昆虫文様・器物文様・物語/人物文様・正倉院文様・有識文様・名物文様に分けられます。
◇植物文様は、四季の変化に富んだ日本で様々な植物が身近にあり、可憐な形や生命力を文様化してきました。松竹梅は代表的な祝儀の文様で、桜や椿、藤、紅葉は、季節を表すものとして好まれています。又、季節がいつなのかを限定しないように自由に図案化した草花もあり楽しめます。
◇架空の文様は、想像上で生み出された東洋独特の動物です。主に仏教などと共に中国からもたされた文様があります。理想を元にデザインされているので吉祥性があり、鳳凰などは礼装に多用されます。逆に龍などは、趣味的文様として用いられます。そのほかに福の神や風の神なども文様として取り入れられています。
◇器物文様は、筆や巻物などの文房具や茶道具、陶器類や文箱や扇などあらゆる器物が古くから文様化されてきました。単独で表現されたり草花との取り合わせで表現されたりします。檜扇や御所車などの王朝ふうなものは、晴れ着に、道具尽くしや生活に密着したものは小紋等のしゃれ着向きです。
◇正倉院文様は、奈良時代に最高の各種工芸品に表された文様を言います。時代の名を取って天平文様とよばれることもあります。日本の古典文様として最古に位置付けられ、多くは渡来文様に影響されたもので格調高い文様として好まれています。
◇有識文様とは、平安時代以降に公家の服装や調度品などの装飾に用いられた独自の優美な様式を持つ文様の総称です。正倉院文様が日本の風土に合うように和様化したものであり、日本の模様のもととなるものです。飽きの来ない典雅な吉祥文様として礼装等に多く用いられています。織の文様に由来するものが多く、年間を通じてご使用できる文様です。例えば、小葵文や立湧文や繁菱文や七宝などがあり雲取り文様の中にそれぞれが描かれていたり、立湧くの間に色々な文様柄が描かれていたりと様々です。その時代の公家の服飾紋様を有職文様といいい「王朝風模様」の着物と大変調和します。
◇名物裂文様とは、中国の明時代を中止に舶載された織物に見られる文様の総称です。日本では、室町から桃山時代にかけての時代です。主に茶道の世界で珍重され、それぞれの名称がつけられました。幾何学的な柄から唐草調まできわめて多様ですので名物裂写しと気が付かないことが多いかもしれません。織の技法には、金襴・緞子・錦・間道・風通・モール・鶏頭・荒磯・ぼたん唐草などがあります。格式のある文様ですが、控えめな色柄が多いです。そんな場合は、少し控えめなお席にお締め頂くと安心です。